[注意:ここに記載されている内容は、2011年9月16日に署名された米国特許法の改正の内容を含んでおりません。]
これからアメリカの特許制度について何回かに分けて説明していきたいと思います。
まず、アメリカ特許制度の特徴からはじめたいと思います。
アメリカ特許制度には他国の特許制度にはない特徴的な制度がたくさんありますが、その中でも主なものを挙げると以下のようになります。
先発明主義 -First to Invent System-
米国は他の国と異なり先発明主義を採用している。
- 最先の発明者のみが特許を受けられる。(35USC102(g))
- Interference (35USC135)
異なる出願人が同一の発明について特許出願をしたとき、または特許を取得したときにどちらが先に発明をしたかを審査する制度。 - 手続が複雑でありコストもかかる。
- 発明者のみが出願人になることができる。
- 出願に際して発明者のDeclarationまたはOathが必要である。
情報開示義務 -Information Disclosure Statement (IDS)-
特許出願に関与した者は、自己の知っている先行技術文献をUSPTOに提出しなければならない義務を負っている。(37CFR1.56)
審査請求制度がない
日本では審査請求をしなければ審査されないが、アメリカでは出願をすると自動的に審査される。
再発行出願 -Reissue Application-
特許の一部にerrorがあるため特許全体が無効になってしまう場合には、特許の訂正を求める再発行出願を行うことができる。
特許期間の調整制度 -Patent Term Adjustment (PTA)-
USPTO内での処理の遅延等により特許発行までの期間が長くなってしまった場合、長くなってしまった分だけ特許期間が補填される。
料金割引制度
従業員500人以下の小企業や個人発明家などのsmall entity、非営利団体に対しては、手数料や特許料が半額になる。
判例法主義
アメリカでは「法は根源的に判例から発生する」という判例法主義がとられている。新たな判例により法律の解釈が変動していく。
陪審員制度
特許侵害訴訟における当事者は陪審審理を請求することができる。
連邦巡回控訴裁判所 -Court of Appeals for the Federal Circuit (CAFC)-
連邦巡回控訴裁判所が特許法上の民事訴訟を専属管轄し、特許法上の統一的な判決が下される。
三倍賠償
裁判所は、故意に特許権を侵害した者に対して損害賠償額を3倍まで引き上げることができる。(35USC284)